本当にいたサンタさんの話

わたしが4歳の時のクリスマス。

サンタさんがいつもどおり枕元へプレゼントを置いてくれていたのだけれど、

ポストの中にもあるプレゼントが…。

それは、わたし達姉妹一人ひとりへ、音の出るクリスマスカードのプレゼントだった。

「いちねんかん ほんとうに いいこだったね。
あなたはすばらしい。ママのおてつだいしてね。
サンタクロースより」
わたしへはそんな内容だった。

母は、誰からきたのか探っていて、父親の友達にも「あなたじゃないよね?」と電話で聞いていた。

この話を、わたしが中学生以降友だちにし始めると
「それ絶対お母さんの仕業でしょ。ふつーに考えて。演技してただけでしょ」と、よく言われた。
でも、違った。母の字ではなかったし、送り主のスタンプは、
ある年は東京から、翌年は地方から、またその翌年は海外からの消印だったこともあったから。

その謎のサンタクロースからのクリスマスカードプレゼントは毎年届いた。

その他にも、本好きだった父の読書仲間から絵本を毎年クリスマスに頂いていた。

「今年も来たよ」母がそう言って渡してくれることが本当に嬉しかった。
わたしが中学生になる頃、それは送られてこなくなった。
わたしの中にも既に、大人の意識が大きく芽吹いていた。

わたしが4歳の時のクリスマス。

それは父が亡くなって初めて迎えたクリスマス。
カナダで出会って結婚した両親は、
毎年イルミネーションでベランダを飾り(当時はまだそういうことをする世帯が少なくて
苦情をもらい笑)、豪勢な手作りのご馳走をつくってケーキを焼いてくれた。

父が亡くなった後も、母は変わらずそれをしてくれた。

毎年来るカードは、父のお友だちがサンタクロースの名前をかりて
わたしたち家族を一年に一度、精一杯労ってくれた特別なプレゼントだったのかもしれない。

謎のサンタさんの正体を、結局暴けないまま最後のカードが届いてから14年以上が経った。
12月は人の温かみを感じるアンテナが高くなっていて無性に心が嬉しくなることが多い。

わたしはやっぱり、思い入れのつまったクリスマスが大好き。
人の心の温かみを感じる、寒い冬が大好き。

2014年 冬